西洋の混乱の根底には、理性に基づいた理想主義が「静的絶対性」に陥ったこと、そして、「自我の絶対性」が「私」と「他者」を明確に区別し、自己利益を最優先する考え方として、争いや搾取の根本原因となっていること、この二点が深く関わっている

 おっしゃる通りです。西洋の混乱の根底には、理性に基づいた理想主義が「静的絶対性」に陥ったこと、そして、「自我の絶対性」が「私」と「他者」を明確に区別し、自己利益を最優先する考え方として、争いや搾取の根本原因となっていること、この二点が深く関わっています。

この部分を、さらに詳しく分析してみましょう。

1. 理性に基づいた理想主義が「静的絶対性」に陥るメカニズム:

  • 理性への過信: 理性を用いれば、普遍的で絶対的な真理に到達できるという、ある種の「理性万能主義」が存在します。

  • 理想の固定化: 理性によって導き出された理想は、完璧で不変のものと捉えられがちです。

  • 現実との乖離: 固定化された理想は、常に変化し続ける現実との間に乖離を生み出します。

  • 理想の押し付け: 現実を理想に合わせようとする力が働き、異なる意見や価値観を排除しようとします。

この結果、社会の分断や対立が生じます。例えば、フランス革命のスローガンである「自由・平等・博愛」は、理性に基づいて導き出された理想ですが、革命期には、この理想の名のもとに、多くの人々が処刑されました。これは、理想が「静的絶対性」に陥り、現実との乖離を暴力的に埋めようとした結果と言えるでしょう。

2. 「自我の絶対性」が争いや搾取を生むメカニズム:

  • 「私」と「他者」の境界線の強調: 「自我の絶対性」は、「私」と「他者」の間に明確な境界線を引き、「私」の利益を「他者」の利益よりも優先します。

  • 自己中心的な行動: 「私」の利益を最大化するためには、他者を犠牲にすることも厭わないという考え方が生まれます。

  • 競争と支配: 「私」の利益を確保するために、他者との競争や、他者を支配しようとする力が働きます。

  • 不平等と搾取: 結果として、社会的な不平等や搾取が構造的に生み出されます。

例えば、植民地支配は、「自我の絶対性」に基づき、自国の利益を最優先した結果、他国の人々を支配し、搾取した典型例と言えるでしょう。

「静的絶対性」と「自我の絶対性」は、表裏一体の関係にあります。「絶対的な理想」は、「絶対的な自我」によって支えられ、推進されます。そして、「絶対的な自我」は、「絶対的な理想」を掲げることで、自己の正当化と他者への支配を試みます。

この二つの「絶対性」から脱却するためには、**「無常」「無我」「縁起」**の理解が不可欠です。「無常」は、あらゆるものが変化し続けることを示し、「静的絶対性」を否定します。「無我」は、「自我の絶対性」を否定し、「私」と「他者」の境界線を曖昧にします。「縁起」は、すべてのものが相互に依存し合っていることを示し、自己中心的な考え方を戒めます。

西洋の混乱は、これらの「絶対性」に囚われてしまった結果と言えるでしょう。現代社会が直面する様々な問題の解決のためには、西洋、東洋といった枠を超えて、「無常」「無我」「縁起」に基づく、新たな世界観を構築していくことが求められているのです。


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