なぜ、トヨタは、成熟腐敗の、流れを断ち切れたのか?それはおそらく、アメリカでのハイブリッド事故調査での、トヨタ社長の聴取などによる、生存危機感と、カイゼンなどの、自己腐敗防止のシステムが機能したからか、と
なぜ、トヨタは、成熟腐敗の、流れを断ち切れたのか?それはおそらく、アメリカでのハイブリッド事故調査での、トヨタ社長の聴取などによる、生存危機感と、カイゼンなどの、自己腐敗防止のシステムが機能したからか、と
トヨタ自動車が、他の巨大企業が陥りがちな「成熟による腐敗・衰退」の流れを、現時点まで比較的うまく回避、あるいは乗り越えられているように見える背景には、ご指摘の要因が大きく関わっていると考えられます。非常に鋭い洞察だと思います。
大規模リコール問題(2009-2010年)による「生存危機感」の醸成:
米国での意図しない急加速問題に端を発した大規模リコールと、それに続く豊田章男社長(当時)の米議会公聴会での証言は、トヨタにとってまさに存亡の危機でした。
この強烈な危機体験は、社内に蔓延していたかもしれない「慢心」や「大企業病」を打ち破り、「お客様第一」「品質神話への過信の見直し」「もっといいクルマづくりへの原点回帰」といった意識改革を強く促しました。
この「自分たちはいつ潰れてもおかしくない」という健全な危機感が、組織の自己満足を防ぎ、常に足元を見つめ直す文化を再活性化させた側面は大きいでしょう。これは「成熟」に伴う「腐敗」に対する強力なワクチンとして機能した可能性があります。
「カイゼン」に代表される自己革新・自己診断システムの機能:
トヨタ生産方式(TPS)の中核である「カイゼン」は、単なる生産効率化の手法ではありません。
現場の従業員一人ひとりが常に問題意識を持ち、主体的に仕事のやり方や品質を改善し続けることを求めます。「なぜなぜ5回」のように問題の真因を徹底的に追求する姿勢も含まれます。
これは、組織の末端から常に問題点を洗い出し、改善していく「学習する組織」のメカニズムであり、官僚主義や形式主義に陥ることを防ぎ、組織の硬直化(=腐敗の一形態)を防ぐ「自己腐敗防止システム」として機能していると言えます。
日常業務の中に、常に自己を問い直し、変化し続ける仕組みが組み込まれていることが、トヨタの強さの根幹にあると考えられます。
さらに、トヨタの強さを支える他の要因として:
トヨタ生産方式(TPS)全体の思想: カイゼンだけでなく、「ジャストインタイム」「自働化(ニンベンのついた)」など、TPS全体が徹底した無駄の排除、問題の可視化、品質の作り込みを促し、組織の健全性を維持する基盤となっています。
長期的な視点と経営哲学: 創業家精神の影響もあり、短期的な利益追求よりも、「社会への貢献」「ステークホルダー全体への配慮」「持続的な成長」といった長期的な視点に基づいた経営判断が行われやすい企業文化があります。
人材育成と現場主義: OJT(On-the-Job Training)や「現地現物」を重視し、現場で考え、問題を解決できる人材を地道に育成する文化が根付いています。
危機対応力と学習能力: リコール問題のみならず、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍、半導体不足など、度重なる危機を乗り越える中で、変化への適応力や回復力(レジリエンス)を培ってきました。危機から学び、教訓を組織知として蓄積する力があります。
全方位戦略(マルチパスウェイ): EVだけでなく、HV、PHEV、FCV、水素エンジンなども含めた多様な選択肢を追求する戦略は、将来の不確実性に対するリスク分散であり、特定の技術への過度な依存を避ける賢明さを示しています。
強固な財務基盤とサプライヤーとの関係: 健全な財務体質と、部品メーカーとの長期的な信頼に基づいた強固な協力関係も、危機時の対応力や持続的な競争力を支えています。
結論として:
トヨタが「成熟による腐敗」の流れを現時点まで断ち切れている(ように見える)のは、ご指摘の「危機感の共有」と「自己革新システム(カイゼンなど)」が重要な役割を果たしていることに加え、TPS、長期視点の経営、人材育成、危機対応力、戦略の柔軟性といった複数の要因が複合的に作用している結果と言えるでしょう。
ただし、トヨタも巨大企業であり、将来にわたって安泰というわけではありません。EV化への対応の遅れを指摘する声もありますし、組織が大きくなることによる潜在的なリスクは常に存在します。今後も自己革新を続け、変化に対応し続けることができるかが鍵となります。
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