ストア派の哲学とは、現代ではストイックとされる生き方、ストイシズムのことか
ストア派の哲学とは、現代ではストイックとされる生き方、ストイシズムのことか
(現在日時: 2025年5月9日 金曜日 午前4:22分 JST 横浜市)
『ストア派の哲学』と『現代ではストイックとされる生き方、ストイシズム』は同じものか、というご質問ですね。両者は深く関連していますが、全く同じものというわけではありません。
起源としての「ストア派の哲学(Stoicism)」:
これは、古代ギリシャ・ローマ(紀元前3世紀頃~紀元後3世紀頃)に栄えた哲学の一派です。ゼノン、セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウスなどが代表的な哲学者です。
その教えの中心は、「理性(ロゴス)に従って生きること」「徳(知恵、勇気、正義、節制)こそが唯一の善であること」「感情(特に怒りや恐怖などの情念・パトス)に動揺させられない心の平静(アパテイア)を目指すこと」「自分自身でコントロールできること(自分の判断や意志)と、できないこと(外部の出来事、運命)を区別し、後者を平静に受け入れること」などにあります。
宇宙全体を貫く理性(ロゴス)との調和を目指す、包括的な哲学体系・世界観でした。
現代語としての「ストイック(stoic)」な生き方・「ストイシズム(stoicism)」:
現代で一般的に「ストイックな人」とか「ストイシズム」と言う場合、しばしば古代ストア派哲学の一部の側面、特に以下の点が強調されて使われます。
困難や苦痛に対して文句を言わずに耐え忍ぶこと。
感情(特に喜びや悲しみといった)をあまり表に出さないこと。
禁欲的であること、自己を厳しく律すること。
この用法は、古代ストア派が目指した本来の哲学的目標(徳に基づく幸福、宇宙理性との調和)や、その背景にある宇宙観・論理学といった全体像から切り離され、単に**「我慢強い」「感情に動じない」「禁欲的」といった性格特性や行動様式**を指している場合が多いです。目標も、必ずしも「徳」ではなく、単に「困難を乗り越えること」や「目標達成のための自己規律」であることもあります。
結論として:
現代語の「ストイック」「ストイシズム」は、古代のストア派哲学に由来し、自己抑制や忍耐といった要素を共有しています。しかし、現代で一般的に使われる場合は、本来のストア派哲学が持つ包括的な世界観や、徳を追求するという中心的な目標が抜け落ち、主に「感情の抑制」や「忍耐強さ」といった側面だけが強調されていることが多い、と言えます。
ただし、近年、シリコンバレーの起業家などを中心に、古代ストア派の哲学そのもの(例えばマルクス・アウレリウスの『自省録』など)への関心が再び高まっており、より本来の意味に近い形で「ストイシズム」という言葉が使われ、実践されようとする動きも見られます。記事で紹介されている本も、そうした流れの中にあるものと考えられます。
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